越生町、黒山三瀧にあるお堂の不動明王像の修復の仕事をさせていただき、先日、お納めさせていただきました。
この不動明王像は寄木で作られており、木を寄せている部分のはぎが切れている箇所も多く、衣の模様の色も時間がたって薄くなっており、又、火焔は上に違う色を塗り重ねられていましたが、彫刻刀で削ってみると元の色が見えてきたので、最初に彫られた時のお姿をイメージして、できるだけそれに近づけるよう努力しました。
長い間、木彫の仕事をして、粘土でもたくさんの人の顔を作ってきましたが、仏像を彫る経験は少なかったので、不動明王の姿や持ち物の意味など勉強しながらの作業でした。
長い時間の中で煤けてしまった玉眼を磨いてみると、力強い眼光が現れてきました。
右手に持つ剣で魔を払い人々の煩悩や因縁を断ち切り、左手に持つ羂索(けんさく/けんじゃく)で悪を縛り上げ人々を救い出すという不動明王。その羂索は失われていたので、両端の金具部分は新たに彫り、五色の紐をつなぎました。
光背の迦楼羅(カルラ)炎は、塗りも剥げ、傷みも多かったので、一度全部彫り直し、切れたはぎを接着し直した上で彩色しました。
こういう炎が大きく前面に出てくるような立体的な火焔を見たのは初めてでした。(仏像本体の高さは80cmほどです)
こちらの写真は修復前のお姿です。
この仕事を紹介してくださったのは、黒山三滝近くの音楽スタジオ「縁音織庵Yosuga neolian」のお二人です。フェイスブックの2019年8月7日 に、この方たちとの出会いを書かせてもらっています。(https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=2259128764399617&id=100009075475746)
1983年から1996年まで私たち夫婦は越生町のはずれの黒山に住んでいました。黒山三滝にも何度も行き、思い出という言葉ではとても言い表せないほどの、魂の交流があった縁の深い場所です。ときがわに越してきてからもう20年以上たちますが、今回、その場所に帰って関わりながら、この仕事をさせていただけたことは、私にとっては本当に貴重な経験でした。
そして、瀧のエネルギーと炎のエネルギーが入りまじり合って、重い課題を多く抱えた困難なこの時代に、強い風を吹かせてもらえますようにとお祈りしたい気持ちになりました。
黒山三滝の男滝、女滝
(この写真はライトアップされたときのものです。)