師走がすぎ
新しい年を迎えた日
ある一枚の年賀状に目がとまりました。
それは八ヶ岳の麓に住む、一人の詩人からいただいたものでした。
浮かぶ梅の花びらの写真に詩が添えられています。
時の流れに浮かび
逍遙する
ふた色の花びらよ
共に明日(あした)を夢見る
幽(かそ)けきいのちよ
詩/川杉幸春、 写真は「お茶のおけいこ.やさしい茶花の入れ方 (世界文化社)」 から借用されたそうです。
その葉書きを読んだとたんに、私の口からほっと息が出て、あわただしさの中で波立っていた心がすーーっと水平線のように平らかになるのを感じました。
揺れる赤い花びらと白い花びら…
あの人とこの人の 想いの違い
言葉を駆使する人間と 無言の生き物
聞こえる音と 声なき声
時の流れの中には大小の渦があり、またおだやかな水面もあります。
いろいろあるはあるけれども、
声高に叫ぶ人も静かな人も、力のある人もない人もどの人も、
幽けきいのちを生きて そぞろ歩いていて、
人と人が出合う、人と生き物が縁あって出会うことは、
たとえその間にどんな荒波があったとしても
共に明日を夢見る ふた色の花びらなのかもしれない。
そう思いました。
長い嵐が過ぎ去ってみれば、同じまなざしをもったふたつの魂だったことがわかる、そんな幾組かの方と出会えた昨年でした。
そして
世界は激しく動いても、心のどこかにこの詩と写真のような静かな場所をもっていたいと、新しい年の始めの日に願いました。
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返歌
言の葉が流れていく先に
子供の心が待っていて むかえてくれる
そんな 歌をつくりたい